●みなさん、おはようございます。今年度の終業式にあたり、話をさせていただきます。
新型コロナウイルス感染拡大を防止するために3月2日から休校が続いている中での修了式になり、密集を避けるため、高校生は第一体育館で中学生は第二体育館で時間をずらして行うことにしました。新型コロナウイルスは、昨年12月31日に中国の湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」として最初の症例が確認されて以降、武漢市内から中国全土に感染が広がり、中国以外の国と地域に拡大し、日本では1月16日に感染者が確認されました。3月11日に、世界保健機関WHOのテドロス事務局長は、「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と述べて世界的な大流行になっているとの認識を示した上で、各国に対して対策の強化を訴えました。3月22日時点で169カ国に渡り、感染者311,988人、死者13,289人となっています。日本では、3月22日正午現在では、感染者1,046人で、亡くなった方は36名となっています。咳やくしゃみで出た飛沫を介して、インフルエンザと同様の経路でヒトとヒトとの間で感染し、感染しても症状がないまま経過することも多い状況になっています。密閉空間に多くの人が密集するなど、近距離の密接な環境になると集団感染クラスターが発生しやすいという情報が出されています。今後、大切なことは、感染拡大を阻止すること、自分が罹らないように予防すること、正しい情報を正しく理解することであると言われています。今あらためて普段と変わらない日常の有難さを感じます。何も普段と変わりがないことは当たり前のことではなくて、正に有難いことであって、それだけに一日一日を大切に過ごさなければならないと思っています。
●文部科学省は、今日、学校再開に向けた考え方や留意事項をまとめたガイドラインを全国の教育委員会に通知する予定になっています。その原案が昨日の夜に判明しました。それによれば、換気の悪い密閉空間で、多くの人が密集し、近距離での会話が行われるという3つの条件が重なることを徹底的に避けるため、換気の励行や近距離での会話の際のマスクの使用などを明示してあるそうです。今後の学校行事の実施に際しては、密閉、密集、密接という3条件が重ならないよう対策を行い実施することになりそうです。
●ところで、私はこれまでの始業式や終業式で、自分自身が本校生であった頃に、こんなことを知っていれば良かったと思うことを話してきました。その最後として、今日は一人のちぎり絵作家のことを話します。皆さんは、ちぎり絵の作品を見たことがありますか?実は今、本校の管理棟2階の事務室前廊下に「八代高校、八代中学校」という作品を壁に飾っています。このちぎり絵は、普通に市販されている色紙をハサミを使わずに指で細く千切って、画用紙に糊付けして作られています。製作者は、私が荒尾支援学校の校長をしていた頃に高等部に在籍していた生徒で荒木みのり君といいます。中学2年の時に、放浪の画家と言われている山下清のちぎり絵「隅田の花火」に感銘を受け、独学でちぎり絵を作り始めました。25歳になった現在は、荒尾市にある株式会社旭製作所というガラス製品を作っている会社勤務で梱包作業の仕事に従事しながら、平日は帰宅してからの4時間程度、休みの日には10時間以上も制作に没頭する日もあるそうです。私が昨年の11月に本校の正門から校舎を写した写真を送って制作を依頼し、それを基に作ってもらいました。昨年の11月から作り始めて、3カ月以上かけて作られた作品です。とても細かく千切った色紙で、正門に建っている「熊本県立八代高等学校」「熊本県立八代中学校」の看板の文字も作られていて、私は見るだけで感動します。色紙が必要な時は、私がハンズマンで同じ色が100枚入っている色紙を買って、郵送しました。前回の色紙のリクエストは、「茶色、黒色、コバルト色、牡丹色、焦げ茶色、黄土色、紅色、松緑色、薔薇色、藍色、オリーブ色、紺色、黄緑色」でした。昨年作られた作品に、「天草湯島の猫」という作品があります。天草に湯島という離島があり、そこは人口約300人の島に猫が200匹が暮らしていて、猫と人が共生する暮らしぶりが、強く印象に残ったそうです。制作中に、アメリカのトランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作ったことや、相模原市の障害者施設での大量殺傷事件など、差別や偏見に溢れた出来事が次々に起こり大きなショックを受けています。だからこそ天草湯島の、人にも猫にも分け隔てない穏やかな優しさを表現したかったと言っています。本校に飾ったみのり君の作品を見て欲しいと思います。「高校生と中学生が毎日通っている学校なので、明るいイメージに表現しました」と言っていました。また、「人は自分の信じる道で、いつか花開く」ことを目指して自分もちぎり絵を頑張って作成しているとも言っていました。もう暫くは飾っておこうかと思っていますので、一度見てみてください。
●さて、今後の学校行事の予定については、今週金曜日の3月27日に転・退任式を行いますが、希望者の参加とします。今日のように換気を良くして、密集をできる限り避けるために在校生はこの第一体育館で行い、その後で卒業生対象に第二体育館で行います。なお、転・退任の先生方の一覧表を今日の午後、本校ホームページにアップする予定です。
●また、文部科学省から今日、全国の教育委員会に休校解除の基準が示され、その後に教育委員会から学校に熊本県の方針が伝えられることになると思います。新学期が始まる4月8日には、その基準をクリアーして本校の登校が再開できる状況になっていることを期待しています。
●休校が継続しているままで、春休みに入ります。部活動については、文部科学省のガイドラインを受けて、教育委員会からの指示に従って再開の連絡を今後伝える予定です。部活動も密閉、密集、密接とならないようにして内容や方法を工夫して活動してください。さらに、日頃の生活では、石鹸での手洗いや手指用アルコールによる消毒などの予防を継続してください。今、大事なことは、本校三綱領の二番目にある「自律を旨として 協和を重んずる」の前半部分「自律」であると私は思っています。非常事態となっていますが、こんな時にしかできないことやこんな時だからそこできることを自分で自律して考え、行動してください。今年度の締め括りが、異例の状況での終業式になりましたが、皆さんの健康を願うとともに、これから充実した春休みになることを期待して、これで私からの話を終わります。